もしも人から、
なぜ彼を愛したのかと問い詰められたら、
「それは彼が彼であったから、私が私であったから」
と答える以外には、何とも言いようがないように思う。
孤独の音が聞こえた、ずしり、と重量のある巨大なそれは
生まれたばかりの俺の体では、耐え切れなかったんだ。
「これでよかったんだよな」
それだけ、そう、それだけを残して俺はあいつの元へ向かった。
出会いはとても聡明、そして綺麗で、純粋な一つの時間だった。
俺は彼の絵を単純に綺麗と思い、彼も俺の言葉で喜んで、微笑していた。
生意気な奴だと思っていた、一著前に金持ちで、
世間知らずで我侭だ、俺が譲歩して話さなければならないのを
俺が暗黙の了解だということを理解していたから俺たちは何も狂うことはなかった。 はず
あいつが俺を求めたとき、俺の中には混乱しか存在していなかった。
当たり前だ、俺がその時にあいつに抱いていた感情はただの子供、高校生でしかないあいつを
恋だの愛だので見る以前に、同等の立場で見ることすら
しなかったのだ、この格差の下克上ともいえる逆転は
何なのだろう、でも、あいつの純粋さに、最初はまったく触れられなかったが、
やがて魅せられ、気付かされ、あいつを知りあいつを思いあいつは、
”愛”という感情で結ばれた存在になった。
何時から等で愛は図れない。本当に、俺があいつを助けたいと思い手を伸ばしたその瞬間から
俺たちは互いに求めて互いに傍にいてほしいと願ったのだ。
そして俺たちはいつでも二人きりだった。場所とかではなく、
俺たちは互いに何時もとなりにあいつが居る、そんな錯覚をおこしていたのだ。
そしてその時間はなによりも幸福だといえる、俺は幸せだった。
彼の痛みを俺がほんの少し、理解するだけで
俺たちは互いに幸せをより多く感じることが出来たんだ。
俺はあいつに愛を与えあいつは俺に笑顔をくれた。
それがどれほどの儚い幸せなんて、気付けないほどに。
あの子があいつをどれだけ愛していたのかなんて、苦しいくらいに分かる、
愛に舞わされそうな狂いは自分自身ではどうにもならないことも、分かる。
あの子が本当に望んでいるものが何かなんてのも知っていた、知りたくなどなかった。
あの子の幸せを願っていないなんてのは、断言できるほど俺はひどい奴ではない、
でもあの子の幸せを、俺はどうしても差し出すことが出来なかった。
出来るわけがなかった、俺は女じゃないから、
自分にふさわしい人間はほかに居るはずだわ。なんて、
他の人間をもう一度見まわせるほど、諦めよくもないし、
あいつの代わりなんて居ないという、幻想染みた詩人にでもなってしまうのだ。俺は。
あいつの一つ一つを大切にするという格言すら出来る、俺はどうにかなってしまったらしい。
もし、あいつが本当に俺を愛してくれたら、俺が死んだときも
同じ事をするのだろうか。否、きっとしない、あいつは強いから。
あいつへの想いがこんな巨大な空白を俺の心に残すだなんて。
俺は予想だにしなかったのだ、だからというほど見下しているわけでもないが。
あいつが同じように俺が殺されたのを見たのなら?
きっと答えは俺よりも単純だ、きっとあいつは、あの子を殺す。
あいつは一途だから、それゆえに巨大なのだと。
想いに勝る力などはない、あいつは感情的になって殺してしまう。
とめてくれる奴が繰るまで啼くのか、新しい愛人でも作るのか。
そのあたりは、俺でも予想することが出来なかった。
俺が想っているのは、あいつが泣かずに頑張って生きる姿と、
悲しそうになく顔しかない。笑い声は、まだ生み出せると信じているから。
あえて、何も触れないで起きたい。
でも、それは、歪みなどではない、あいつが秘密を一つもつ事によって俺はそれを
気付かないようにあえて見えないふりをする。
おかしくなどないよ、全てを知っているから友情だなんて想わない。
あのことあいつじゃないけど。本当に愛すということは。
あいつを只好きになり、あいつの好きなこと知り、
あいつと同じ罪を受け、それでも呼吸をやめないことだ。
故に人間は、いつも美しい。彼となら果てない沈黙でも愛おしい。
沈黙に恐れを強く感じれば感じる程、互いは互いを必要としていないのだ。
俺はあいつとの沈黙なら、何時もでも耐えられる。
存在が沈黙を表すのなら、虚無が表したものは一体何なのだろう。
一つ一つ、0へと近づいていく。これで終わるのだ、
莫大な孤独から、あいつへの想いから。
俺はあいつがこのまま一人で逝かせるのはかわいそうだから
共に逝った、嘘ではない、真実などでもない。
俺は自らの命を絶つことで一つだけ永遠分の幸せを手に入れたのだ。
それは、のえると共に同じ場所へ向かうという、目的という幸せを手に入れた。
それは悲しいことなどではない、だけど、悲しいものだ。
俺は怖くなどない。ただ、悲しいのだ。
のえるが死んだのが悲しくて、のえると共に逝くといういいわけを考えながら、
俺はのえるという現実から逃げ出してしまった。
愚かさに塗れた愛
ある一人の人間のそばにいると,他の人間の存在など全く問題でなくなることがある。
それが恋というものである。
20070309