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銀河の果てにきたのであっても、こんなに遠くはないんだろう。 そうして、寝転んでみたとしても、殺伐とした銀河の風景は変わらずにきらきらしていて。 何十年前には、これが綺麗だとまだ思えてしまっていたのだが、 何百年もたった今では、ただの星屑の滓。言うならば燃えた塵の一つでしかないと、 そう考えれば考えるほどに、心は貧しく萎んでいき、溜息を溢す。 第一、寝転んでも、数秒後に元気な(何百年も変わらない)罵倒が飛ぶので、すぐに眼が移るのではあるが、 彼にとって、それは、いつもと同じことなのだ、永遠に何も変わらない、自分たちであるが、故に。 「ローレンス!そんな所で寝転んでないで何か話さんか!」 きりきりと、威勢のいい声は、やはり彼が天才であるのを確信づけるように、自分の耳にもきちんと届いた。 彼は、寂しさを持たぬためにそのような体を持ったのではないのだろうか、 普段は私利私欲を見せびらかしているくせに、 その赤い瞳で、生温かい者たちを嫌っていたくせに、こんなくだらない所で、人間のような言葉を出した。 「あ、いえ、すいません。もう話すものがないので。」 そう告げれば、彼もまた、それが否定できない事実であると、悟り、またそれを呑み込むことを、拒んだ。 現実的な話をこうも安らかに持ち出すだけで。酷く弱る様が、まるで人間のそれだった。 冷たい大気のかけらに、鉄の隅が蝕まれていくように、彼は少しずつ縮んでいく。 別にあと何億という年月も、傍には居れるのであろうが、きっとそういう事じゃなかった。 質量を持たぬ重み――、抉らずに、つぶさずに、静かにそこに沈んでいく、その重みが、彼と、恐らく自分すらも、圧縮させた。 「もぉ、……いやじゃ、なにもしたくない、つまらないのじゃ……」 温度を持たない、その手を顎に添え、眼を逸らしていた。見えてもいない。現実のような、この暗い空間から。 「歌でも差し上げましょうか?なんなら私のにボーカルでも…」 「それは嫌いだと言っただろう!勝手に、いつのまに…そんな…くだらない…、」 あ、ショートを起こしてしまう。 そう感じて不意に足を向けかけたが、彼は何の事もなくまた足を組み直し、静かに留まった。 彼のような、その人間を毛嫌う心の淵で、人工知能の末に生まれた感情が、何もかもを奪っていた。 感じてはいないはずなのに、それが嫌うという、その生臭いもの。、 そのような道徳的な物が、拒めないと、自分ですら理解できていた。 自分の作り手の所為か、それにもまた加えて自分の所為、間接的に似ていた、その異物への感情。 けれど、似ているといえども、何もかもが違うはずだった。 彼は、こちらに寄ってきているようで、永遠に近づくことはできず。 自分もまた、似ているようで、絶対にこの人にはなれなかった。 ―――銀河に朝は来ない。夜だとすらいえない。暗黒……どこまでも続くその闇の輝き…。 沈黙が、いつまでも続いてもおかしくない。 下らない話をさせる事も慣れあいではない。 たいして、心を開き合った関係でもない。 自分は、何一つとして、存在価値などなかった。 言ってしまえば自由。それも、切り捨てられるデーター…。 それでも…この人を守らなければならなかった。 この人が…永遠に自分の名を叫び続ける限り…。 黙ってその場を退き、彼の眼の前に座り込み、その、沈黙を抱いた、美しい人口の瞳に、交わる。 彼は拒絶しなかった。基それをする必要もなかった、 頭がいいというのも、別にして、彼は必然性をそこに見出してはいなかった。行動や、発言なども。 彼には目的しか存在しない、成し遂げるそれしか抱けないゆえに、誰も拒まず、興味も抱かなかった。 それは何の悲しみの原でもない、怒りの原因にすらなりえない。 自分だって、そうしてなにも抱けないようだったのだ、という過去論が、すべてを覆すのだから。 「ネファリウス様」 ちらりと、その電光が鮮やかに映え、こちらに移る。 「………何じゃ、………」 「…ついたら、一番に行きましょうか、」 「……?」 人間でいえば、眉間に皺、とでも表せようか。 その機械的な音が、自分の目の前で動き、彼の手先の御蔭で長けた、振動を伝えた。 彼にだって生まれているのだ、どんなに拒もうが撥ね退けようが、その人工的な世界の狭間で。 呼吸し、つぶれ、消えていると判断しなくても、やがて、それが膨らんでいるものだと理解するだろう。 そういった話では、自分のほうが幾つかは人間性がある。以前見た彼のふざけた映像も、加えて。 いつか彼も、そう気付かぬうちに、自分がどれほど人間を捨てていないか悟るだろう。 この私にはわからない、その、境界線を越えてしまうのだろう。 寿命を持たぬ、機械。意思に委ね、その存在を知らしめる個体―――。 私には叶わない話である。望んでもいない、下らない仮定では、あるが、 だから、―――だから、もし。この続いてゆく数十年の果てに、彼が元に戻るのだと気付くとき、 そのとき――、そのときまで。せめて、その時間だけでいい。 「言ったでしょう…?、ディナーに、行きませんかって……、」 彼がまだ機械でいるうちに、私と同じ息をして。 幾億の星 |