(2007213)
雨の音が耳に張り付いて、ついでに髪の毛も頬に張り付いて、絶望もついには張り付いてはがせなくなった。
空は仮縫いしたみたくほどけやすく、その裂け目からは天國か地獄かが顔を出した。
一体どんな顔だったんだろうか、考えにくいことこの上ない。だって天國と地獄に顔なんてないんだもの。
地獄の顔はあいの顔?それじゃあ愛らしすぎるわ。下手な冗談ではなく本当に。愛らしくはあるけれど、
それでは少し易し過ぎる表現かしら。
ねぇ、亮。あなたのぞっとする髪の一筋と血の死を吸う瞳はもうすこし、それ相応の名をつけるべきかしら。
それじゃあ、天國の顔は誰だろう。本当のきれいな神様は地獄ではなく天國にいるからきっとそれなんだね。
でも、その顔がどんな顔なのか、あたしの貧困な想像力では到底引き出せそうに無い。
ああ、雨の日はやっぱり欝だ鬱だうつだ。雨の線は絡まって何本の思考に成り代わり、その糸の多さにあたしの脳はなやまされる。
そんな愚かなあたしは一目連の瞳の形と色を記憶するようにじっと眼を凝らして凝視していた。
ひどく褪めた心で見つめる世界は、無意味にも明るく鮮やかに輝いて、
虚無はひっそりと隙間を狙って息を潜める。その息遣いには星空のようなつめたさがあったのを誰も憶えてはいまい。
高らかにあがる歓声に思わず眉を潜めて耳を剃り落としたくなったのはごまかせない。幾年もこの日は過ぎて来て、また今日も過ぎていく。
メリークリスマス、だなんて、最愛の人を失った世界の終わりになんてことだ。
迷うだけ迷って挙句の果て自分のすべきことさえわからなくなったこの己をあなたは震動するほどの愛で救った。
その愛はとても汚くて綺麗で聡明で一途なものだった。
私が触れても言いのなんていわないけれど、
この愛は、私が一生掛けて大切にしていきたい、そう。思えた、思うしかなかっただけ、
そうやって誰かに頼ることでしか生きれない己と、誰かを助けることでしか存在価値を見出せないあなたとで、
互いの利害関係は一致していた。ただそれだけのことだと、わかっている。だけど自惚れてもいいか。
ただ利害など関係なく、己と人間として分かり合おうとしてくれていたのだと、自惚れてもいいか。
そんなことあなたがくれる海よりも深い愛から見つけることなど容易なはずなのに。
なのにそれすらわからない己にひどく吐き気がする。
苦しくて恋しい。この痛みは一番自分が生きているからなのだと強く感じることができる。
生きている証なのだと強く思う。
ああ、世界のどこかの地中深く誰にも気づかれない場所であの人への慕う心を輝く瑠璃色とともに祈りましょう。
たとえ意味がないものだとしてもこの想いを謡うだけで十分だと思うのは、この愛がそれほどまでに雄大なものだと知っているから。
独占したいのではなくて寛容したいのです。ああ、これが愛なのですか。
薄い白雪に、彼の血があまりにも不釣合いで
薄く笑ってみた、ねえ、こんなに笑えて幸せなのは貴方のおかげだよ、
ありがとう、なんて本当に足り切らない
私がしてあげられたのはあなたを愛したくらいだもの、
本当に本当に、生きられたこの愛を
私は一生、大事にしようと思う。